家の中に滝が2つ!カナダのシェアハウスで浸水被害に遭った話
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朝起きたら天井から水が浸水。しかも家には自分一人。そんなとき、あなたならどうする?これは実際にカナダのシェアハウスにて起こったトラブルの話です。
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古い一軒家にはネズミがよく現れる
今からちょうど10年前のことです。
私は、当時築20年程の一軒家でルームシェアをして暮らしていました。その家は3階建てで、1階にはポルトガル人とイスラエル人父子が、2階にはイタリア系カナダ人カップルが、そして地下には家のオーナーのフィンランド人と私の合計7人で生活していました。
カナダの一軒家には地下階があることが一般的で、寒い季節に家を暖かく保つためにfurnaceと呼ばれる暖房炉が設置されていたり、洗濯室があったりします。大きな家になると、地下が個別の住居スペース(アパートメント)になっているところもあり、地上階に上がらずとも何不自由なく暮らせるスペースになっていたりします。
ただし、地下階は太陽の光が差し込む窓が小さかったり少なかったりして、基本的に年中暗くて湿気ているため、地上階よりも少し安めの価格で賃貸に出されています。そのような安い地下アパートは、多少難ありでも経済的には大変ありがたい物件で、今も昔も変わらず重宝しています。
さて、この一軒家ですが、築年数もあってか、ボロが明るみに出てきていました。例えば、地上階の住人がシャワーを長時間浴びたりすると、地下の天井から度々水が漏れ落ちてきたり、壁や床裏にリスやネズミが穴を開けて侵入して来たり。特に冬になると、ネズミが寒さをしのぐために屋外から逃げ込んできて、害がひどくなっていました。
既に1年程その家に住んでいた私にとって、これらはもはや日常茶飯事の出来事で何とも思わなくなってきてはいましたが、2月のある日、住人のポルトガル人が夜中に大きな悲鳴を上げて、皆が飛び起きる事件がありました。どうやら彼にとって大の天敵であるネズミが1階の寝室に発生したようなのでした。
ネズミを忌み嫌いすぎて「ネズミ」という言葉すら口に出せないこのポルトガル人の彼は、その夜のうちに2階の空き部屋へと引越すことになったのでした。
その翌朝。今度は私が悲鳴を上げることに。
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朝目覚めたら家の中に滝が2つ!
その日は午前11時半頃に起床アラームをセットしてあったのですが、珍しくアラームが鳴る前に目が覚めました。「まだ、もう少し時間があるから、2度寝しよう」と布団に入ろうとしたところ、変な音が耳に入りました。
ぽたっ ぽたっ
どうも音からして、また天井から水漏れしているんだなと思い、眠りにつこうとしたところ、この音のスピードがみるみるうちに速くなり、しまいには
じょわー
という音に変わっていたので、異変を感じ、起きて様子を確認することにしました。
起きて目にしたのは、天井から落ちてくる細い糸水でした。しかも、よりによって、私の勉強机の真上から水がしたたり落ちているではないか。急遽、机の上の物を片付けて、安全なところへと移動させ、これ以上、被害が拡大しないようにタオルを持ってこようと、バスタオルを取りに行くも、こんなときに限って、バスタオルが見当たらない!
そうこうしているうちに、細かったはずの糸水がいつの間にか噴水並みに勢いも太さも増して、もうしたたり落ちるなんて程度のものではなくなっている。これはいかん、ということで、急いで地下のキッチンから鍋を持ってきて鍋を水の下にあてるも、これではいずれ、鍋が溢れてしまうのが目に見えている。
そこで、もっと大きな容器をと考えたところ、外に放置されたままで使われていない30リットルくらい入る大きなゴミ箱が使えることを思いつき、1階へと上がっていくと、今度は何やら怒号のような音が聞こえる。しかも、どうやら音がするのは、昨晩までポルトガル人が生活していた部屋。
恐る恐るその部屋へ足を運んでみると、今度は噴水なんかではなく、直径50センチくらいの水の塊が消防車の放水ホース並みの勢いで、クローゼットの上から湧き出でている。しかもお湯である。
すったまげて、もうもうと立ち込める湯気の中しばし呆然としたものの、すぐに我に返り、自分のミッションは何なのかを思い出す。とりあえず、1階のキッチンから一番大きな寸胴鍋を持ち出してきて、その滝の下にあてた。外にあるごみ箱を取りに行くまでの気持ちばかりの時間稼ぎである。
すぐさまスノーブーツを履いて、雪が積もっている外へゴミ箱を取りに行った。しかし、こんな時に限って、ゴミ箱の中に雪が積もっている。しかも、ゴミ箱の半分くらい雪が詰まっている。ひっくり返して、雪を捨てようにも、こんなにぎっしり詰まった雪は重くて、ゴミ箱自体をひっくり返せない。
仕方がないので、雪を手で外へすくい出してみたが、素手で冷たさへの耐性が低すぎて、我ながら役に立たない。ええい、こうなったら、雪もろとも運ぶしかない。
というわけで、外から雪の詰まったゴミ箱をなんとか引きずって1階まで運び、お湯の滝の下にあてた。これで少しは時間が稼げるに違いない。
そうして、地下に戻ると、やはり水の加減がだいぶ弱まっていた。しかし、辺りは悲惨なことになっていた。床もカーペットも水浸しで、おまけにお湯が天井の木や1階の床を熱したために、何とも言えない焦げくさいようなニオイがしていた。
そうこうしているうちに、また地下の水の勢いが増してきた。しかも、今度は噴水なんかではなく、小さな滝並みの勢いで水が落ちてくる。もしやと思い1階に行ってみると、案の定、ゴミ箱がお湯で満杯になり、お湯が溢れ返っている。
考えろ、考えるんだ。と必死に考えた結果、外にある巨大ゴミ箱(200リットルくらい入ると思われる)の存在を思い出す。ゴミが少し入っていたけれど、この際、四の五の言っていられないので、ゴミをゴミ箱から出して、空になった巨大ゴミ箱をえっこらせと運んで、この滝の下にあてた。これで、今度こそ、しばらくは大丈夫に違いない。
しかし、この滝の勢いと言い、お湯と言い、おそらく室内と室外の寒暖差で水道管が破裂したことを悟る。日本でも一度、水道管が破裂したことがあり、床上だけ浸水になったことがあることから、そう確信した。
とにかく緊急事態なので、これは大家さんに知らせなければと思い、外出中の大家さんに電話をかけるが、大家さんの携帯の電源がオフになっていてつながらない。おまけにこんなときに限って、この家には自分一人しかいない。いつもは7人も住んでいるのに…。
仕方なく、他の住人で唯一、電話番号を知っていたイスラエル人に電話をして、事情を説明し、外出先から大家さんを車で拾って、至急帰宅してもらうように頼む。後は、大家さんの帰宅を待つばかりなので、この時間の間に今の自分にできる限りのことをすることにした。
これ以上、浸水の被害が拡大しないようにカーペットをどけてみたり、いろいろ物を移動させてみたり、ショートしないように電化製品のコードを抜いてみたり、電気を消してみたりした。
ちょっと一息つこうかと思った頃、またまた地下の水の勢いが増してきた。今度は、噴水がいくつもあちこちから、流れ落ちてくる。まさか、と思い、1階へ行ってみると、やっぱりあの巨大ゴミ箱も溢れている!
しかし、今度はこのゴミ箱が巨大すぎて、またお湯の量も多すぎて、動かすことすらできない。どうしたものか。苦肉の策で、先ほどまで使っていた寸胴鍋を使って、お湯をゴミ箱から汲みだして、捨てることにした。滝の元へもどる度、湯気でメガネが白くなりながらも、お湯を汲んでは捨て、汲んでは捨てを繰り返し続けた。何往復もしていると、我ながらなかなか手際が良くなって、ゴミ箱の中のお湯の量もだいぶ減ってきた。
そうしている間に、やっと大家さんがイスラエル人父と帰宅した。大家さんは帰宅するなりすぐに地下へと走って行ったので、「さすが、家の主。やること分かってるじゃん」と思い、その後ろを追いかけていくと、大家さんは地下のトイレへ入った。いや、そっちかい!(大家さん曰く、「トイレも僕にとっては緊急事態だよ!」)
そうして、トイレから出た大家さんはすぐに水道栓の元を閉め、ようやく滝の勢いがおさまったのでした。
しかし、お湯の滝の中、駆け回った筆者は上から下までずぶ濡れ…。そんな筆者をよそに、談笑していた大家さんとイスラエル人父がとても印象的でした。
大家:「いやー、昨日のうちにポルトガル人が2階へ引越しておいてよかったなー」
イスラエル人父:「今回、ネズミは大役をおおせつかったなー」
両者:「ははははは」
「ははははは」じゃないよ!誰が全部処理したと思っているんだ!
最後に
こんなすごい滝を家の中で2つも見たのは、後にも先にもこのときだけです。筆者は今も地下住まいで、別宅ながら築30年以上となかなか古い物件に住んでいますが、こんな滝を見ることがないように祈るばかりです。
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この記事を書いた人
トロント在歴13年目を迎える文化と言語とお笑いが大好きな関西人。ヨーク大学言語学部卒。TESOL・CILISATを取得し、語学学校カウンセラーやESL講師、日英通訳などを経て、現在、日本語教師&フリーライターなどをしている。