【弁護士に聞く】留学エージェントのトラブル3~留学業界には法規制がない!!兵庫弁護士会が意見書を提出

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『【弁護士に聞く】留学エージェントのトラブル』シリーズの第3弾です。前回の記事では自転車操業方式の経営を続けた結果倒産した留学エージェントの実例を紹介しました。どうしてそのようなずさんな経営方法がまかり通ってしまったのか?今回は、留学業界の法規制に関して言及します。

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前回の記事『【弁護士に聞く】留学エージェントのトラベル2~留学エージェント倒産の実例~』 では、留学希望者が学校の授業料として支払ったお金を、すぐには学校へ支払わず会社運営費に充て、留学希望者の留学日が迫ったら、別の留学生が学校の授業料として支払ったお金を先の留学希望者の授業料として学校に支払うという自転車操業方式の経営を続けた結果倒産した留学エージェント2社の例を紹介しました。

ここで1つの疑問を抱いた人も多いのではないでしょうか?
ずさんな経営により会社が倒産したとしても、留学生が支払ったお金は戻ってこないのか?ということです。

留学エージェントが倒産したら、お金は戻ってこない

留学業とサービスモデルが似ている旅行業では、『旅行業法』により消費者は守られており、申し込みをしてお金を支払った旅行業者が倒産した場合には、消費者は一定の還付金を受けられるように法で定められています。留学業には、こうした規制はないのでしょうか?

誰でも簡単に留学エージェントを開業できる

答えは、残念ながらNOです。驚くべきことに、現在の留学業には法的規制が一切存在しないのです。それはつまり、誰でも今すぐに留学エージェントと名乗ってビジネスを始めることができるということです。「留学エージェント」を名乗るのに、法律上は知識も資格もまったく必要ないのです。

「旅行業法の適用ができる」にも注意

留学エージェントによっては、「旅行業者としても登録してあるので旅行業法の適用を受けることができる」と謳っているところもありますが、これには注意が必要です。旅行業者として登録してあれば確かに旅行業法の規制を受けますが、これは『旅行業』に該当するサービスのみが規制の対象だからです。

旅行業に該当するサービスというのは、自社で企画したツアーへの参加者募集や、航空券・宿泊先の手配などです。留学エージェントのサービスのメインである海外の学校の斡旋は、これには含まれません。

つまり、旅行業の資格を持っている留学エージェントが倒産した場合、このエージェントを通して手配した航空券の還付は一部受けることができますが、学校への授業料として支払ったお金の還付は旅行業法規制外となり還付は一切受けることができません。お金も返ってこないし、留学もできません。

このように、留学業界には法規制がないために、前回の記事で紹介した2社のようなずさんな経営方法がごく当たり前のようにまかり通ってしまうのです。エージェントの倒産の他にも、高額な解約料、不当表示等の問題が留学業界では増加しているのが現状です。2005年には、国民生活センターが『増加する「留学等斡旋サービス」トラブル』という報告書をまとめているほどです。

留学業への法規制を求めて弁護士会が意見書を提出

こうした留学業界の現状を改善するために、兵庫県弁護士会が意見書を提出しています。兵庫県弁護士会は、前回の記事で紹介したゲートウェイ21倒産時(2008年10月)とサクシーオ倒産時(2010年9月)の二度に渡って、留学エージェントを法律で規制すべきという意見書を提出しています。意見書の内容をここに少し紹介します。

留学業にも法的規制を!

旅行業と留学斡旋業は、旅行を斡旋するか留学を斡旋するかという違いがあるだけで、隣接業である。それにも関わらず、旅行業には旅行業法による規制があるが、留学斡旋業には規制がないのはおかしい。旅行・留学共に期間や内容によって消費者が支払う金額は様々だが、一般的には留学の方が、消費者が費やす費用も時間も大きい。<意見書より>

国民生活センターの2005年の統計によれば、国民生活センターに寄せられた留学に関する相談で、相談者が留学エージェントに支払った平均額は64万円だったそうです。これだけの金額を支払っているのですから、留学業に規制が必要なのは当然だと言えます。

留学業を登録制に!

旅行業同様に、留学斡旋業も登録制とし、登録をしなければ留学エージェントを経営できないようにすべき。<意見書より>

営業保証金制度の設立!

旅行業法では、取引額に応じて国に対して営業保証金を供託していて、旅行業者が倒産した場合も旅行者が一定額の還付を受けることができるようにしている。留学エージェントが倒産した場合にも、旅行と同様に、留学申込者に対して一定額を返還することができるように、営業保証金制度を導入すべき。<意見書より>

弁護士会はさらに、留学エージェントが授業料等を預かることを禁止し、留学申込者が学校に対して直接支払うシステムにすべきだという提言も行っています。

契約書の交付義務とクーリングオフ制度の導入

留学エージェントとのトラブルは、解約料を巡るものが最も多い。その大きな原因の一つは、契約書を交付していないこと。契約書の交付を義務付けると同様に、契約書を交付してからクーリングオフ制度を認めるべき。<意見書より>

契約をした後でも一定期間内なら無条件で契約を解除できるクーリングオフ制度は、サービスの内容が専門的で、大げさなセールストークや長時間勧誘などが行われやすい訪問販売や電話勧誘販売、エステティックサービス、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスに適用されますが、留学業もこれに当てはまると考えてもよいでしょう。

また、クーリングオフ制度が適用されれば、「契約書を交付していない=いつまでもクーリングオフが可能」となるため、留学エージェントに確実に契約書を交付させるようにするという狙いもあります。

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留学エージェントとのトラブルを避けるには?

このように、留学業界への法規制を働きかける動きは見られるものの、まだ実際には法規制がないのが現状です。こうした現状を踏まえて、日本学生支援機構(JASSO)では、自分で留学の手配をすることを推奨しています。

また、2011年より、留学サービス事業者団体による一般社団法人「留学サービス審査機構」(J-CROSS)が留学斡旋業者の認証を実施しています。

J-CROSSが作成する新ルールとは?

J-CROSSは、留学サービスの事業者団体(一般社団法人 海外留学協議会(JAOS)、留学・語学研修等協議会(CIEL))と、留学を専門に消費者相談や紛争処理を行う消費者団体(NPO法人 留学協会)が協働し、留学エージェントが遵守すべき新たなルール(基準)を作成し、個々の留学エージェントがそのルールを満たすかどうかの認証を第三者の立場で行うために設立した団体です。エージェントがJ-CROSSの基準を満たしているかを認証することで、留学生の安心を確保し、同時に留学業界の適正化を目的としています。

認証基準のうち、違約金に関する項目に関してはまだ改善の余地が見受けられるものの、それ以外の部分は、兵庫県弁護士会の意見を反映したものとなっています。具体的な認証基準はJ-CROSSのウェブサイトにて確認できますが、留学希望者が一番気になるお金の支払いに関しては、次のような基準が設けられています。

前受金の保全等(J-CROSSウェブサイトより抜粋)

  1. 出発日の90日前までは、消費者に学費等(制度上期日が定められているビザの発行等に係る対価を除く。)の支払いを請求しないこと。
  2. 次のいずれかの条件を満たすこと。
    ① 一定の健全な財務状況(直近の決算が債務超過でなく、かつ、直近の純資産額が直近3年間の最大赤字額以上であることをいう。)であること。
    ② 学費等を海外機関に送金するまで、消費者に代金を請求しない取引形態であること。
    ③ 学費等の送金を代理しない取引形態であること。
    ④ 供託、信託、保証金制度等により、消費者からの学費等の総額の半分以上の額を保全する措置を講じていること。

つまり、J-CROSSの認証を受けている留学エージェントであれば、出発日の90日より前に授業料という名目でお金を請求されることはありません。

認証を受けたエージェント数

J-CROSSの認証は法規制ではありませんが、留学エージェントの健全性を判断する目安となります。ただ残念なのは、J-CROSSの認証制度が開始したのが2011年なのにも関わらず、2015年5月の段階で、認証を受けたエージェントは僅か29社のみということです。J-CROSSの認証はエージェントからの自主申請によって行われるので、留学エージェントが全国に300社以上あることを考えると、あまりにも低い数字です。

最後に

留学エージェント自身も、今の業界の在り方に問題があることを認識してはいるようですが、法をはじめとする様々な規制は受けたくないというのが現状なようです。

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CooL
CooL

訪問国数44ヶ国、現在スペイン在住。留学・語学学習・海外生活の知識が深まる情報を海外からお届け。

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