「農業」をテーマに4ヶ国を奔走した学生のモットーとはーートビタテ!留学経験者インタビュー Vol.10 前編
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最初は20ヶ国に行こうとしていた?トビタテ生の中でも、その明るい行動力と農業にかける想いで異彩を放っているトビタテ生の大学生活6年間の集大成となった留学経験に迫ります。前編である今回は、どうやって留学計画が生まれていったかの経緯と、それを可能にした「モットー」をご紹介!
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今回インタビューしたトビタテ生
細越雄太さん
現在は社会人2年目の細越さん(写真左)。東京農業大学にて在学中、アメリカ留学を経て大学4年次にトビタテ!(※)留学を経験しました。トビタテ!ではベトナム、タンザニア、フランス、アメリカで約7ヶ月間の留学を通して、有機農業をテーマに調査、研究、インターンシップを行いました。
※トビタテ!=トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム。官民協働の留学支援制度で、返済不要の奨学金が給付される。
それではまず「有機農業」をキーワードに、どのように4ヶ国を決め、計画を実行に移していったのか聞いてみましょう。
学んだ農業知識を還元する、集大成の留学にしたい
ーー 細越さんは4ヶ国行かれたということで、とても特徴的だと思うのですが、留学していた期間はそれぞれどれくらいでしたか?
ベトナムに2ヶ月、タンザニアに2ヶ月、フランスとアメリカにそれぞれ1.5ヶ月です。
ーー それぞれの国での授業は、どのようなものだったのでしょうか?
授業らしい授業はありませんでした。トビタテ!の特徴は留学中の活動を全部自分で決められるところにあります。そのため、留学先の設定や、調査研究内容・方法、所属先を自分で決める必要があります。
ですので、大学には「所属する」という形で、自分のやりたいことをしていました。私が当時所属していた東京農業大学には世界に25校以上の協定校があって、その中から留学先の大学をピックアップしていきました。最後のアメリカに関しては、行きたいインターン先があったので留学の途中で追加しました。
ーー インターン先は事前に決めていたということですか?
留学の計画の段階ではインターンすること、もっと言うとアメリカに行くことは決めておらず、ベトナム、タンザニア、フランスの3カ国を2ヶ月ずつ、計6ヶ月の予定でした。留学の途中でアメリカにあるインターン先に連絡をしたところ、OKをもらったので、留学計画を変更することになりました。
ーー なるほど。協定校への留学といえば、長期間行かなきゃいけないってイメージがありますが。
かなりイレギュラーだったと思います(笑)。トビタテ!の1期生として合格したことも手伝って、「短期になるのですが、こういう研究がしたくて、特別に協定校に席を置かせてくれませんか」と、だいぶ無理難題を留学センターの人にお願いしました。
ちなみに当初は、在学中に世界各国の姉妹校の学生と関わる団体に所属していた関係から、色んな国に友達がいましたので、その友達を訪ねて世界20ヶ国を巡る半年間の旅を留学計画として申請ていました。トビタテからも学校からも「え?半年間移動で終わっちゃわない?」と、NGが出てしまい(笑)。それで4ヶ国に絞りました。
ーー イチから準備を進めるのは大変そうでしたね。
そうですね。1期生ということもあって、何がOKで何がダメなのかがイマイチ定まっていないこともあったのですが、農業という軸は一貫していたためか、最終的には何とか合格させてもらいました。今改めてトビタテ!を受けたら合格するプランなのかはちょっと分からないのですが。(※現在は、各所属先に1ヶ月以上の滞在が条件になります)
留学センターの方も無理難題を協定校に交渉して下さり、こうして一度に色んなところに行く留学計画が実現できました。農大の留学センターの方には本当にお世話になりました。この場を借りてお詫びと御礼をお伝えしたいと思います。
ーー 実際に農大としては、ウェルカムな雰囲気だったんですか?
農大にとってもトビタテ!は初めてだったので、「この学生合格しちゃったよ、どうしよ」みたいな感じだったかなと(笑)。
実はトビタテ!で留学する前にも、4年生のとき1年半休学し、アメリカへ農業留学をしていました。その関係で大学卒業が夏卒業になってしまうので、トビタテ!に受かっても受からなくても、就職するまでの半年間は海外にいようと思っていました。
ですが、ちょうどそのタイミングでトビタテ!が発足したことを知り「受けてみよう!」と思ったら受かったのですが、トビタテ!は学生じゃないと受けられないので、卒業してしまうと奨学金を受けられないのです。
そこで、特例で半年間、卒論を書くという名目で8月卒業を3月にまで延ばしてもらいました。大学史上、2回も休学して留学する学生は初めてだったのではないでしょうか(笑)。
集大成のために4ヶ国留学を選んだワケ
ーー トビタテ!の前にもアメリカでの農業の留学経験があったのですね。
そうです。大学生活の最終的な目標としては「大学で学んできた農業の知識経験を、途上国で還元をする」ことでした。それをするためには、今の自分には何が足りていなくて、何をしなければならないのか、常に考えていたのですが、そのひとつが、最初のアメリカ農業留学でした。アメリカ留学は当時も自分にとってのゴールでも何でもなく、目標を達成するための手段のひとつとして考えてました。
私の学生生活は、3つの段階に分かれるのですが、それをトビタテ!成果報告会でも発表しました。
(↑細越さんが実際に発表で使用したスライド)
大学生活最初の3年間が①です。大学の授業だけでなく、農業はやってみないと分からないので自分でアポ取り、大学1〜3年までは長期・短期休みを利用して北海道から沖縄まで様々なところでファームステイをさせていただきました。
その上で、日本だけじゃなく他の国の農業も見ることと、英語を学びたいということで、②のアメリカ留学を選択しました。そして、これまで培ってきたものを途上国に還元する集大成的な活動が③で、それが、たまたまトビタテになったというわけです。
ーー どうしてベトナム、タンザニア、フランス、アメリカにしたのですか?
まず最初に、自分の留学テーマとして有機農業を軸にするということを決め、そのテーマと自らの疑問とすり合わせていきました。
例えば、ベトナムでは除草剤は当たり前のように使用されています。しかしベトナム戦争でアメリカ軍によって使用された枯葉剤は現在の除草剤の元となっているものです。「甚大な被害をもたらした枯葉剤が元となっている除草剤をなぜ彼らは使うのか」という疑問を解決するため、ベトナムを選びました。
タンザニアを選んだのは、有機農業と伝統的農業の違いを探るためです。タンザニア人は有機農業と伝統的農業を明確に区別しているという話を聞いていたので、「さほど大きな違いは無いはずなのに、彼らにとって明確な区別する要因はどこにあるのか」という疑問を解決するため、選びました。
フランスについては今後のことを考え、有機認証制度を世界で初めて導入した農業先進国でこれからの農業を学びたい、と思い選びました。
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波乱万丈の現地での生活
ーー 学校の授業は受けましたか?
大学には籍を置いて調査研究が主で、実際には現地の農家さんのもとで一緒に作業を行ったり、話を聞いたりしました。各大学にカウンターパート(現地での受け入れを担当する人)のような人がいて、その方々を通じ、やりたいことを農家さんの紹介などで形にしていきました。
ーー 現地の農家さんとの暮らしとなると、とてもハードですよね?
とてもハードでしたよ!まずベトナムでは水が合わなくて大変でした。とにかく、ベトナムのろ過機を通した水が酸っぱくって。さらに、その水を飲んだ次の日には朝からずーっとトイレにこもっていました。田舎の人たちって水を買わないんですよ。
フランスでは、タンザニアでは出国直前のフィールドワーク中に足に菌が入ってしまったらしく、フランス入国後に足のサイズが1.5倍になるくらい腫れてしまって。人生初の入院で、10日間ほどパリで入院しました。
(↑パリで入院中の細越さん。)
初めての入院がパリってかっこよくないですか?(笑)完治したのは最近で、ついこの間まで通院していました。なんでも日本ではとても珍しい事例なので去年の10月の学会で自分の検体が出されました。面白くないですか(笑)?
ーー 笑ったら申し訳ないですけどちょっと面白いです(笑)。気を取り直して、現地での生活はどんな感じでしたか?
ベトナムでは寮に滞在しました。シェアルームでインドネシア人がルームメイトでした。日本の寮のような綺麗さはなく、コンクリートむき出し感は否めなかったです。普通に過ごせましたけどね。
タンザニアは、寮が満杯だったのでゲストハウスに滞在しました。こちらは一人部屋でしたね。研究で訪れているオランダ人やデンマーク人もいて、彼らと一緒にご飯を食べたりもしました。
(↑友人との一枚)
ーー それぞれの学校は、どんな学生におすすめでしょうか?
私が行ったのはどの大学も農大との協定校でしたから、農業や食と関係がある人が行く学校ばかりでした。でも「今は日本で農業と関係ない大学にいるけど、農業に興味がある」ような人にとっては、参考になる大学だと思います。
実際タンザニアの大学では、日本の大学で開発学を専攻していて、卒業後自分で調べてタンザニアの農業大学に留学している日本人とも出会いました。その人はタンザニア人と結婚して、いまでもタンザニアに住んでいます(笑)。
あとは、日本でモテない方にもおすすめです。実際に、ベトナムとタンザニアですごくモテたんです!現地でSIMカード買ったとき、店員から突然求婚されたこともありました(笑)。
考えるより動く!そしてネタで溢れる人生を!
(↑キリマンジャロ登頂を達成した細越さん)
ーー 留学を通して心がけていたことはありますか?
留学に限らず学生時代よりずっと心がけているのが、動きながら考えることです。考えてから動くと、スピード感が削がれちゃいますよね。だからやってみて、やってみながら考えれば、合う合わないもわかるし、合わないならやめればいい。
特に留学中だと目新しい物がたくさんあります。それをやらないっていう選択肢は簡単だけど「やってみて後悔するならする。失敗するならする」という気持ちが大切ですね。
あと、一貫して、人生はネタ作りだなと思っているところがあり、ベトナムで犬や蛇を食べてみました。日本だったら絶対できないだろうなっていうことをあえてやってきました。
タンザニアで挑戦したキリマンジャロ登頂も、コーヒー農家の調査で見かけたキリマンジャロを見て、登ってみようかなって。自分にとって初登山でしたが、意外とやってみたらなんとかなるなって(笑)。
ーー 細越さんのこれからの人生もたくさんのネタができていきそうですね!
これからもネタ作っていきますよ!
以前いろは出版より出版された、大学3年までの私の経験を書いた本にも「知覚動考」と、書いてあります。「知って、覚えて、動いて、考える」という意味です。
さっきもちょっと大学1〜3年までの話をしましたが、1年生のときに初めて農業実習に行った先の農家さんに「お前は動く前に考えすぎる」って怒られてしまって…。その際に「知覚動考」という言葉をかけてもらいました。
その言葉をモットーに生きていたら、こんな人間になりました。自分がおじいちゃんになった時には、孫に話せるネタをいっぱい持っていたいなって思っています。
(↑タンザニアでの一枚)
ーー 今回の留学を通して学んだことはなんでしょう?
事前のイメージやステレオタイプに囚われないことが重要だということを学びました。
もともと途上国支援をしたいというのがあって情報を集めていましたが、留学する前まで、アフリカでは人が道端でゴロゴロ死んでいるんじゃないかって思っていたんです。でも本当はそんなことなくて。
そういう知識しか集めていなかったから、実際に行って空港や道路が綺麗に整備されていることだけでも衝撃でした。今まで自分が思っていたアフリカと実際に訪れて自分の目で見たアフリカが違いすぎて。
「日本人だから」とか「農大生だから」とか、そんなステレオタイプは使いやすいですけど、それは極力避けようと思いました。0か100かではなく、残りの99のところってすごく大きいなと。そういう部分を考えるようになったのは、大きく変わった部分だと思います。
インタビュー前編を振り返って
細越さんのお話を聞いて、彼が他の留学経験者と一線を画す2つの理由が見えてきました。一つは、トビタテ!留学を大学生活の集大成にしたこと。大学での学びを、トビタテを上手く活用し、海外でカタチにすることで、それを卒業後につなげる道すじができあがっていました。
もう一つは、「ネタ作り」精神の明るさです。困難に出会ったら、それを「留学中に困難を乗り越えた経験」として話す人は多いと思います。しかし、細越さんはそれをすべて「留学中」ではなく「人生のネタ」として、いかにもオモシロイ話として語って下さいました。細越さんにとって、あらゆる経験は自分の人生を豊かに、面白くしてくれる「ネタ」なのです。
これが、留学経験が細越さんをより面白くさせ、周りの人を惹きつけている理由なのではないでしょうか。後編は、そんな細越さんがアメリカの有名レストランでインターンシップをした際のお話です。
インタビュアー
佐藤 果歩(さとう かほ)/早稲田大学3年/アブログインターン生
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