海外移住と海外就職は別物?海外へ移住・永住する際に考えておきたいこと

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最近では海外がより身近になってきているためか、国内よりも国外に出て就職したいと思う人たちも増えているようです。特に筆者の住むタイは、親日国であり気候の良さや物価の安さから旅行はもちろん、そのままタイに住みたいと考え、職探しに訪れる人も多く見かけます。しかし、そういった方々の中には、海外で生活することが決まった時点で浮き立ってしまい「将来はどうするのか?」という点について深く考えていない方も見かけることがあります。ここではタイで永住者として生活している筆者が考える「海外移住」についての考え方をお伝えします。

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外国に滞在するためのビザの種類

日本のパスポートの写真
Wikimedia Commons

現在、筆者の住むタイでは一般的に以下6種類のビザが存在しています。

観光ビザ

旅行で滞在するために誰でも申請することができるビザ。

教育ビザ(学生ビザ)

タイに留学する際に取得しなくてはならないビザ。

就労ビザ

タイで仕事をする際に取得しなくてはならないビザ。

配偶者ビザ

タイ人と婚姻関係にある人が申請できるビザ。

リタイアメントビザ

50歳以上で条件を満たした人が取得できるビザ。

永住ビザ

いわゆる「永住権」と呼ばれるビザ。

タイの場合は他にも金銭的に余裕がある人が購入することができる「エリートカード」という制度もありますが、こういった制度は国の情勢などから、すぐに条件が変わったり制限される場合があるので、一般的な滞在許可とは言えません。

今や世界中で移民や難民といった問題が多くあり、特にタイは生活のしやすさから長く滞在したいと考える人々も多いため、以前に比べて長期滞在を可能にするためのビザや条件、手続きも厳しく制限されるようになってきています。

ビザというものは、どんな国でも同様で、何の目的で滞在するのか、という点で大きく変わることになります。旅行で入国するのであれば「観光ビザ」となりますし、このビザのまま就労することは当然違法であり、見つかった場合は国外退去やブラックリスト入りで、今後その国へは入国拒否になる可能性もあります。

タイでは以前は陸路で出入国を繰り返し、観光ビザを取得したり延長して長期滞在することもできたようですが、現在はそれもさまざまな規制がされているようです。

そしてタイで就職や起業した場合は、会社や自身で用意した書類を元に「就労ビザ」の申請をすることになります。こちらは1年間の滞在許可がされますが、当然その会社の書類で就労ビザを取得しているので、他の仕事をして収入を得ることはできませんし、もしもその会社を退職したり解雇になった場合、その後の滞在許可は得られません。

さらに就労ビザに加えて「ワークパーミット」いわゆる「労働許可証」を申請する必要もあり、このビザと合わせて2つの許可があってタイで初めて仕事をすることが可能になります。

日本で多くの人が老後に取得するのが「リタイアメントビザ」になります。こちらは申請者の貯金額や年金証明などを元に書類を作成し、観光ビザよりも長期で滞在許可を得ることができるビザとなります。

当然ながらこのビザで仕事に就くことはできませんし、年齢やその他の条件もあるので、全ての人が申請できるビザではありませんが、安定した貯金や年金がある人々には今も人気があるビザと言えます。

そして多くの国にある「永住権」という制度がタイにも存在します。この永住権を取得すると、永住者として滞在できる「永住ビザ」が受理されることになります。しかし、タイでは長期滞在のために永住権を取得したいと考える外国人が大勢いるため、取得条件はとても厳しく簡単ではありません。

たとえタイ人と婚姻関係にあったり、タイ人パートナーとの間に子供がいて永住したいと思っても、それらが永住権取得のためだと疑われる場合もあり、簡単には受理されません。

タイにはタイの国民の生活を優先する義務がありますので、簡単に他国民の永住を受け入れるという訳にもいかないのも事実です。

海外で「就職」することと「移住」することの違い

タイのパスポート

タイで就職先を見つけて日本からやって来た方々の中には「タイに移住した」と仰る方々もいます。しかし、実際には移住ではなく「仕事のための短期または長期滞在」であると筆者は感じています。何故なら「移住」というのは、言うなれば「移民」であり、言い換えれば「特別永住者」といった扱いになるからです。

タイでは永住権を取得すると永住ビザの他に「外国人登録証」と「住居登録証」という書類に名前が登録されることになります。この外国人登録証はタイ語で「ใบสำคัญประจำตัวคนต่างด้าว」と書かれており、「ประจำตัวคนต่างด้าว」とは直訳するならば「永住在留外国人」という意味になります。

タイで「คนต่างด้าว(在留外国人)」といえば、ラオスやミャンマーのような近隣国から流れて移民として在留するイメージが大きいためか、タイ人の友人には「永住権を取得したのにどうして在留外国人(移民)扱いになるんだ?」と聞かれたことがあります。

そのとき友人には「外国人は結局他所の国の人間なので、タイ国内で色々な制限があるが、移民は国に優遇されているから永住が許可される、移民とは決して貧しい国から移住して来る人たちのことだけを指す訳ではない」と説明し、永住権の意味を理解してもらえました。

タイでは永住者となると、就労や収入の有無に関係なく永住できるのは当然ですが、ワークパーミットの手続きが簡単になるという点もあります。これは「永住者はタイに定住の住所があり永住しているので仕事をする」という扱いとなるからです。

空港のイミグレーションで提出する出入国カードも、タイに入国する際には外されるようになります。これはタイへの入国が「タイに帰って来た」という扱いになるためです。他にも、永住者は帰化申請ができる権利を持つなど、さまざまな特権があります。

要するに「移住」と言うのは、タイ政府が外国人を「移民」として認証し、定住許可した場合を指す言葉であり、就労ビザやリタイアメントビザで長期滞在するということは、書類的にもいつか日本へ帰ることが前提とされています。

もちろん定年まで就労ビザで滞在し、その後リタイアメントビザに切り替えたり、タイで会社を経営して日本人側の株主として就労・滞在していくなど、さまざまな方法で長期滞在を続けることはできます。

しかし、そういった滞在方法は、所詮外国人として扱われることに変わりはありません。万が一何かあった際に帰る場所というのは、やはり自身の出所である日本になるのではないでしょうか。

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海外生活とキャリアプラン

海外での就職や生活を人生の経験のひとつとして考え、数年間海外で仕事をして日本に帰る人や、いつ帰るかは分からないが、何らかの方法でずっと海外で過ごして行きたいと思う人など、さまざまな考えを持つ人たちがいることでしょう。

タイでの就職経験は日本ではプラスの経験にならない、という話を聞いたことがあります。しかし、どのような仕事で、どんな役職に就いていたかということも関係するので、一概にキャリアアップに繋がらないとは言えません。

確かに、日本の方がタイより先進国ではあるので、そう言った意味ではキャリアアップになる例が少ないと言うのも事実でしょう。逆に言えば日本で経験を積んだ人がタイに来れば、良い役職に就くことができる可能性も大きいということになります。

しかし、大事なのは海外で就職したとして、その後の将来を計画的に考えられているか?ということです。きちんとした将来計画を持たずに海外で長期間過ごしてしまうと、日本へ帰国した際にその経験が逆に足を引っ張る結果になることもあり得えます。

ですから、安易に海外で就職したい、海外移住したい、と意気込んで日本を出て行くのではなく、3年後、5年後は自分はどこで何をしていたいのか?という目標を明確にしておくのはとても重要なことです。

人生の計画は逆算して考えて行くべきものだと筆者は考えております。老後にどこでどのような生活をしたいのか?ということを後回しに考えず、まずそこからスタートし、今は何をしなくてはいけないのか?と進んで行くべきではと思っています。そうすれば、海外での就職もステップアップのための滞在期間だと割り切って、より一層打ち込むことができるのではないでしょうか。

また、本気でその国に定住し骨を埋める覚悟であれば、単なる就職とはまた違ったことを求められたり、努力しなければならない場合もあります。海外で生活すると決めたら、自分は何故その国に居たいのか?という気持ちを明確にすることが、将来のために必要なことであると筆者は考えます。

海外で長期滞在する場合に考えておきたいこと

海外で就職し長期滞在する場合、まず気になる点と言えば、やはり自身の家族のことではないでしょうか。

海外で数年留学や仕事する程度であればさほど問題ないかもしれませんが、そのままずっと就職して滞在していくとなると、日本に住んでいる両親や家、または資産など、さまざまな問題が出て来るかもしれません。逆にそう言った個人的な部分が問題なくクリアできるのであれば、自身の人生を海外で過ごすという選択もスムーズにいくでしょう。

自国を捨てて海外で永住していくとなれば、それなりの覚悟が必要になることになります。いくら他国の言葉を流暢に話し、文化を理解していたとしても、結局その国の出身ではないというのは事実であり、暮らしていくためにはそれなりの準備は整えておかなければなりません。

筆者は、今後もタイで永住者として生活していくつもりでいるので、そのためにしておかなければならないこと、例えば住居や資産、保険など全て計画を立てて管理しています。短期滞在で過ごすのであれば、タイで生命保険や住居を購入する必要もありませんが、永住者は日本で老後のことを考えるのと同様に、働き盛りのうちから準備していかなくてはなりません。

何となく働いて貯金しているだけでは、怪我や病気になった場合、どうすることもできません。タイの医療費はとても高額ですし、何かしらの事故に遭っても相手側に保障してもらえる可能性は非常に低いのが現実です。

タイに限らず、今後海外で定住、永住していくつもりの方は海外で仕事を始めたときから考えていかなければならないことが多くあることを、心に留めておいて欲しいと思っております。

まとめ

私たちは生まれて来てから自身の親や出身を変えることはできませんが、大人になってから進む道を自由に選ぶことは可能です。ですから、日本に生まれたとしても、他の国に自由に留学や就職をしたり、そのまま移住していくということもひとつの生き方です。

しかし、そのためには多くの難題をクリアして、永住するための準備や努力を重ねなくてはならないということを、今後世界へ出て活躍する留学生の皆さまも心に留めておいて欲しいと願っております。

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この記事を書いた人

Namyam
Namyam

タイ在住。タイの南部からバンコクに引っ越してきました。お寺巡りとプラクルアン集めが趣味。休暇はタイの南の島でシュノーケリングするのがお決まりの過ごし方。

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