てるみくらぶと重なる留学エージェントの倒産~代理店の存在価値がなくなる時代へ~

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2017年3月27日に旅行会社「てるみくらぶ」が、約151億円の負債を出して倒産しました。旅行業者の倒産としては、リーマン・ショック以降最大規模のようです。そして、この倒産の経緯や被害状況を見ていくと、過去の留学斡旋会社(留学エージェント)の倒産事例との類似点に気づきます。同じ被害を繰り返さないために、旅行会社・留学エージェントの利用者として、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

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てるみくらぶ倒産の被害状況

旅行会社「てるみくらぶ」の倒産は、ニュースや新聞でも大きく取り上げられているので、ご存じの方も多いと思います。

3月27日に行われた会見では、被害総額約151億円のうち、てるみくらぶを利用して海外旅行をしようとしていた人、現在旅行中の人など、一般利用者への責務だけでも約100億円に上り、最低でも9万人近くが被害を受ける見通しだと発表されました。

さらに、被害を受ける旅行者のうち、約3000人が現在海外渡航中で、帰りの航空券が使えない、宿泊先が予約されていないといったトラブルが発生する可能性があるそうです。こうしたトラブルに対して、てるみくらぶ側は営業を停止しているため何もすることができず、旅行者自身で対処するしかない状況です。

実際に、てるみくらぶ主催の韓国・釜山行きのツアー旅行に参加し、3月27日に帰国した女性は、現地に着いてみたらホテルの予約がされていなかったため、事前にてるみくらぶに対してホテル代を含めた旅行代金を支払っていたにも関わらず、改めてホテル代を自腹で支払い宿泊したと、空港でのインタビューに答えました。

これだけでも、かなり非業ですが、さらに追い打ちをかけるのが、被害者への返金は、ほぼ不可能という事実です。

この被害状況は、過去に起きた大手留学斡旋会社(留学エージェント)の倒産と重なります。

株式会社ゲートウェイ21

株式会社ゲートウェイ21は大手の留学エージェントでしたが、2008年10月に約12億9000万円の負債を抱えて倒産し、ゲートウェイ21に申し込みをしていた約1300名の留学生予定者の渡航が不可能となり、すでに渡航していた約1000人の留学生も学校への授業料がゲートウェイ21から全額支払われていなかったため被害を受けました。被害を受けた利用者への返金の見通しは立たず、たくさんの人の留学が泡となって消えました。

株式会社サクシ-オ

2010年7月、ゲートウェイ21と同じく大手の留学エージェントであった株式会社サクシーオが倒産しました。負債総額は約8億円、留学不可能になった人が約435人、既に渡航中で学校・滞在先へサクシーオから支払いがなされてなかったために被害に遭った人が約205人でした。こちらも、被害者への返金は不可能でした。

今回のてるみくらぶの方が全体としての被害額の規模は大きいものの、各利用者の個人単位で見た場合、旅行より留学の方が1件の単価が大きいことが多く、また仕事を辞めて渡航するなど人生の一大決心をして留学に行く人も多くいるので、利用者一人一人が被った被害は留学エージェントの倒産時の方が大きかったかもしれません。

実際、上記の2社の留学エージェントが倒産した際は、渡航中だった利用者の中には、会社が授業料・ホームステイ代を学校に支払っておらず、金額が高額なため再度自腹で支払うことも出来ずに、やむなく途中で帰国した人もいました。留学の場合は、先述した釜山ツアーに行ったてるみくらぶの利用者がホテル代を自腹で支払ったように、自力で対応するのは金銭的に難しいことが多いです。

利用者への返金はほぼ不可能

以前、『【弁護士に聞く】留学エージェントのトラブル3~留学業界には法規制がない!!兵庫弁護士会が意見書を提出』で、留学業界には旅行業界のような法規制がないために、留学エージェントが倒産した場合は返金が受けられないと紹介しました。

しかし、今回倒産したてるみくらぶは一般社団法人日本旅行業協会の正会員で、協会による弁済制度の適用を受けることができます。それにも関わらず、なぜ利用者への返金ができないのでしょうか?

それは、被害額があまりにも巨額なために、弁済制度を利用しても、まったく足りない状況だからです。協会のWEBサイトにも、下記のように弁済できる金額は一定の範囲内であることが記載されています。

弁済業務保証金制度は、旅行業協会の正会員である旅行会社(保証社員と呼びます)と旅行業に関して取り引きをした消費者がその取引によって生じた債権について、旅行業協会が国に供託した弁済業務保証金から一定の範囲で消費者に弁済する制度です。

一般社団法人日本旅行業協会『弁済業務保証金制度について』

今回適用される弁済制度の限度額は、てるみくらぶが協会に納付している弁済業務保証金分担金2,400万円の5倍に相当する1億2,000万円です(てるみくらぶのWEBサイトより)。被害総額の151億円のわずか1%にしかすぎず、被害を受けた人すべてが返金を受けることはできません。

ただ、留学エージェントの倒産と比較した場合、てるみくらぶの1%しかない弁済金も、まだマシと言わざるを得ません。利用した留学エージェントが破産した場合、会社の資産はなく、弁済制度もないので、1%どころか1円も被害者の元には戻りません。

先述した留学エージェント2社のうち、ゲートウェイ21が倒産した際は、社長を詐欺罪で刑事告訴するという話も持ち上がりましたが(実際には告訴されませんでした)、仮に社長が告訴されて有罪判決を受けたとしても、お金が戻ってこないことには変わりなく、被害者にとっては何の救済にもならないのが実情です。

留学エージェントがこのような状態で倒産してしまったら、被害者は海外には行けず、返金も受けられず、会社は倒産していて何もしてくれず、怒りの矛先を向ける場所すらなく、ただ諦めるしかないのです。

倒産の経緯

倒産の一番の要因は、新聞広告を打ち出したことにより経費がかさみ資金繰りが悪化したことだと、てるみくらぶの社長は述べています。

てるみくらぶは1998年に創設し、格安海外パッケージツアーを中心に展開して売り上げを伸ばしてきました。2011年には年間約134億2,400万円を売り上げ、その後も売り上げを伸ばし、倒産から僅か半年前の2016年9月には約195億円を売り上げていました。

売上数字だけを見れば、経営が順調な大手旅行会社だと、一般の利用者には見えます。しかしその陰では、広告を打ち出したことにより媒体コストが増えたこと、社員数増加による人件費や経費が増えたこと、円安の影響を受けて利益率が悪化したことなどから、経営状態がどんどん厳しくなっていったようです。

最終的に、航空券を発券する際に必要なIATA(国際航空運送協会)への支払い期日であった3月23日に、支払い金額約4億円を用意することができず倒産しました。

利用者に影響が出始めたのは23日以降で、一般利用者にとってはまさに突然の出来事でした。

しかしそれでも、利用者が支払ったお金は航空券購入や宿泊施設予約等、利用者の旅行のために使い、利益の部分のみを広告費に当てていれば、これほどまでの負債を抱えて倒産することはなかったはずです。

実際には、利用者から預かったお金をすぐに航空券購入や宿泊先への支払いに使わず、広告費に回していたために、最終的に首が回らない状態になってしまったのです。

倒産直前には、かなり資金繰りが厳しかったようで、「現金一括入金キャンペーン」と称して、旅行代金を現金で一括入金した利用者への割引キャンペーンを行っていました。クレジットカード払いや分割払いではなく、現金一括払いを促したり、申込みから入金までの日数が1日しかなかったり、今思えば、てるみくらぶが必死になって現金を集めていたと考えてもおかしくない点がいくつかあったようです。

これは先の倒産した留学エージェント2社の経営方法とまったく同じです。2社共に、留学希望者が学校の授業料として支払ったお金を、すぐには学校へ支払わず会社運営費に充て、留学希望者の留学日が迫ったら、別の留学生が学校の授業料として支払ったお金を先の留学希望者の授業料として学校に支払うという自転車操業方式の経営を続けた結果倒産しました。どちらの留学エージェントも、倒産直前は全額一括入金を勧められた人が多かったそうです。

旅行会社、留学エージェント共に、執拗に現金一括払いを勧めてきたり、早急な支払いを促す会社は要注意です。

旅行会社・留学エージェントの存在意義

旅行や留学を代わりに手配してくれる旅行会社・留学エージェントは、海外の知識が少ない利用者にとっては便利です。ただ、その利用にはリスクが伴うことを忘れてはいけません。

旅行会社・留学エージェントでは、利用者の旅行代金を預かり、利用者に代わって然るべきところ(ホテルや航空会社、語学学校など)に支払いをします。一見便利なこのシステムこそが、今回のてるみくらぶ、過去の留学エージェントが倒産した際に、被害を大きくした要因です。

利用者から預かったお金を、そのまま然るべきところに支払いをしてくれればいいのですが、てるみくらぶや倒産した留学エージェントの例のように、広告費や事業拡大費等の経費に充ててしまう旅行会社・留学エージェントは意外と多いです。

預けたお金を自分の旅行・留学に使ってもらえないなんて、利用者からすれば、あまりにも理不尽ですが、それができてしまうのが、旅行業界・留学業界の怖さです。

自分が旅行会社・留学エージェントに支払ったお金がどこに使われるのか分からない、自分が支払った旅行代金が然るべきところに支払われていなかたら、もし会社が倒産した場合には渡航できない上に返金も受けられない可能性が大きい、というリスクを伴ってまで、旅行会社・留学エージェントを利用する意義が本当にあるでしょうか?

旅行会社・留学エージェントを通すことで発生するリスク考えると、ホテル、航空券、留学先に自分で予約をして支払いをするダイレクトブッキングが一番良いという結果にたどり着きます。

これからは海外に行くには自己手配の時代

今や、一般の人でもインターネットですべてを手配できる時代です。自分で調べて手配するので、日程はもちろん自由自在ですし、宿泊先もホテルだけでなく、Airbnbやホステルなど、自分のニーズにあったものをチョイスすることができます。

ツアーガイドの後について回るだけの旅行より、自分で手配した主体的な旅行の方が強く思い出に残ります。

エクスペディアスカイスキャナーなど自分で宿泊先や航空券を検索・予約できるサイトの利用者が世界中で増加していることからも分かるように、旅行会社に頼らず自分ですべて準備して海外旅行に出掛ける人がどんどん増えています。

それは留学も同じで、様々な海外の学校・コースを調べて、分からないことがあったらメールで直接学校に質問し、申込み・支払いも学校に直接して、自分に合ったオリジナルの留学プランを作って渡航する人が増えています。

また、こうした留学エージェントの倒産から、「個人手配サポート」を行う留学サービスも存在しています。学校と直接契約を行い、授業料も学校に直接支払うことができます。

旅行会社・留学エージェントのトラブルに遭わないよう慎重に会社選びをするのも一つの選択肢ですが、トラブルを避ける一番の選択肢は、自分で手配し、料金は実際に利用する宿泊先、航空会社、学校等の然るべきところへ直接支払うことです。

そして、自分だけのオリジナルな海外体験をすることこそが、海外へ行くことの醍醐味ではないでしょうか。

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CooL
CooL

訪問国数44ヶ国、現在スペイン在住。留学・語学学習・海外生活の知識が深まる情報を海外からお届け。

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